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犬 椎間板ヘルニア 神経学的グレード

神経学的症状によるグレード判断は、その場で出来るとても有用な検査ですが、実際の脊髄の圧迫程度と必ずしも一致するとは限りません。 厳密に言うと、神経学的症状だけでは、原因が脊髄疾患であったとしても、それが椎間板ヘルニアなのかは断定できません。

本当に椎間板がヘルニアを起こしているのか、またどの程度、椎間板物質(線維輪・髄核)が脊髄を圧迫しているかを直接知るには、犬に全身麻酔をかけて、精密な画像検査(MRI検査・CT検査)をする必要があります。

1-4 神経学的グレード (胸腰椎椎間板ヘルニア)

胸腰部椎間板ヘルニア
グレード 1 神経学的異常なし 背骨痛のみ(背中だけでなく体を触られるのを嫌がる)
グレード 2 後肢
不全麻痺
自力歩行可 よろけながらも歩くことができる。 ナックリング。
グレード 3 自力歩行不可 後足を動かすことは出来るが、脱力のため、歩くことはできない。
グレード 4 後肢
完全麻痺
浅部痛覚なし 後足は全く動かず、後足の皮膚を強くひねっても感覚(浅部痛覚)はないが、
かろうじて後足の深部に痛みの感覚(深部痛覚)がある。 自力排尿不可。
失禁。
グレード 5 深部痛覚なし 後足の骨を鉗子でつまんでも全く痛みを感じない。

背骨には太い脊髄と呼ばれる中枢神経が通っています。 その太い脊髄からは、細い末梢神経(神経根)が枝分かれし、全身に張り巡らされています。 ヘルニアが軽症の場合は、この細い末梢神経を圧迫するため、背中を触ると、ビクッとするような痛みが走ります。 しかし、重症化すると、太い脊髄までも圧迫するため、麻痺が起こり、正常に歩けなくなります。

Mダックスなどのハンセン1型ヘルニアの場合、昨日までグレード1または2だったのに、突然グレード4または5に進行することも時折あるため、内科療法期間中は、絶対安静(ケージレスト)と注意深い観察が必要です。

グレード1~2の場合は、内科療法(投薬)が取られ、グレード3の場合は、内科療法または外科療法、グレード4~5の場合は、外科療法(手術)の適応が検討されるのが一般的ですが、実際には、グレード1~4までは内科療法で自然改善するかを様子見し、グレード5の場合は早期の手術が必要になります。 また、同じ後肢完全麻痺でも、グレード4と5の差は非常に大きく、術後の改善率が大きく異なります。 脊髄の筋肉や腱などの動きにかかわる「深部痛覚」が失われれば、早期(48時間~72時間)に手術しなければ、脊椎が壊死してしまい、たとえ外科手術しても、回復することは不可能になります。

グレードの判断基準となる主な症状

  1. ナックリング 通常、犬は肉球をしっかり地面に付けて歩行しますが、脊髄神経の麻痺により、まるで拳を握るように足先が肉球の方へ曲がった状態になるため、足の甲や爪を地面にこすり付けるような形で引きずるようにして歩きます。

  2. 固有位置感覚 自分の体の各部分がどこにどのように位置しているのかを認識できているかどうかということです。 固有位置感覚に異常があると、立っている時や歩く時に通常通りの手足などの動きが出来なくなるため、ふらついたり手足を引きずる動きをしたりします。

  3. 不全麻痺 麻痺には、運動神経が障害される「運動麻痺」と、感覚神経が障害される「感覚麻痺(知覚麻痺)」があります。 ここで言う不全麻痺とは、運動神経に障害はあるものの、完全に麻痺している状態ではなく、わずかながらも患肢を動かすことができる状態を指します。

  4. 自力排尿 自分の意思でオシッコを出来るか否かです。 オシッコは出ていても、犬の意思にかかわらず「垂れ流し」の状態は自力排尿が出来ない状態と言えます。 グレード4以上の場合、自力排尿できないため、6~8時間おきに圧迫排尿やカテーテル排尿させる必要があります。 これを怠ると、尿路感染症や膀胱炎、重症化すると尿毒症になり、命を落とすことになります。 排便は1~2日出なくても命に別状はありません。 ウンチはお腹に溜まっていれば、圧迫排尿の際にオシッコと一緒に出てきます。

  5. 浅部痛覚 足先を鉗子で骨ごとはさんで、骨膜の神経を刺激し、体表面から離れた部分で痛みを感じるかどうかを診ます。

1-4 神経学的グレード (頚椎椎間板ヘルニア)

頸部椎間板ヘルニア
グレード 1 激しい頸部痛のために、亀のように首をすくめて動かない。 この痛みは胸腰部の椎間板ヘルニアに
比べて非常に強く、悲鳴をあげて痛がることも少なくない。
グレード 2 後肢の障害に加えて前肢にも障害が起こり、フラフラ歩行、転倒、重症になると起き上がれなくなる。
グレード 3 四肢の機能が失われる。 重度の頸部脊髄障害により、呼吸の機能が妨げられ急死することがある。

頸椎椎間板疾患の主な症状は首の痛みです。 犬は首の筋肉を縮めて動かすのを嫌がり、頭を低くして食べたり飲んだりできなくなります。 また、首に触れたり動かそうとすると、あまりの痛みに泣き叫びます。 その姿は甲羅から頭を少しのぞかせた亀を連想させます。 歩く時には、首の痛みを少しでも和らげるため、頭を低く背を丸め首をまっすぐ保とうとします。

この様子から、よく背中の痛みと誤診されることがあります。 椎間板性の痛み(椎間板由来、髄膜由来、神経根由来)全部が生じているのでしょう。 頑固な痛みは薬剤療法で良くなりますが、治療を止めるとぶり返すという典型的な経過をたどります。

頸部では、かなりの量の椎間板が脊柱管の中に突出しても、運動神経や自己受容刺激の麻痺には至りませんが、ひりひりする痛みは残ります。

治療は、突出した椎間板を手術によって除去することが唯一の方法です。 もし大量の椎間板が突出したら、運動失調か運動不全が見られます。 一般的には、四肢全てが影響を受けますが、その程度は非常に幅広く、もし椎間板が片側にのみ突出したとすると、突出した側の半身だけが影響を受けます(片麻痺)。 首の下部において椎間板ヘルニアが起きると、前足または後足が麻痺します。 幸い深部痛覚を失うほどの頸椎椎間板ヘルニアを発症することは非常に稀です。

主な頸椎椎間板ヘルニアの症状

  1. 頚部の痛み

  2. 頭部の下垂(頭をあげて上を見ることができない)

  3. 歩幅の狭い歩行

  4. 片側の前後肢の不全麻痺(不全片麻痺)およびその影響による跛行

  5. 重症例では四肢の不全麻痺

グレード5における48時間神話の崩壊

1978年出版のB.F.Hoerlein博士の著書の中で、「犬の胸腰部椎間板ヘルニアハンセン1型において深部痛覚が失われた症例、すなわち神経学的グレード5では、48時間以内に手術を行なわれなければならないことが明白になった。」と述べている。 それ以来、多くの獣医神経病学の参考図書として引用されてきた。

しかしながら近年、Anderson(1991年)、Scott(1999年)、Olby(2003年)、Noda(2007年)、Fujiyama(2007年)などの多くの報告で、「深部痛覚の消失後48時間以上経過した症例においても術後の回復」が証明されている。 Olbyの報告においては、深部痛覚消失後2週間以上経過した症例においても回復をしている。

ただし、深部痛覚消失後48時間以内に手術を行なった症例においても、多くの報告で歩行回復は約60%である。 すなわち、椎間板物質(髄核)が逸脱した時に、脊髄にどの程度の損傷を負っているかにより、多くの症例では予後決定がなされていると思われる。