1-5 軟骨異栄養性犬種
軟骨異栄養性犬種とは、生まれつき軟骨異栄養症の素因(遺伝子)を持っている犬種のことで、この犬種に最もよく見られる疾患は、ハンセン1型椎間板ヘルニアです。
軟骨異栄養性の犬種は、骨の成長期(生後6ヶ月~2歳)の段階から椎間板の変性が始まり、若年齢期(2~7歳)に椎間板ヘルニアの発症のピークを迎える傾向にあります。
本来衝撃を吸収するクッションの働きをするはずの椎間板は、水分を失い弾力性を失うため、日常の背骨にかかる無理な負担の蓄積によって、椎間板ヘルニアの症状が現れ始めます。
ちなみに、ハンセン1型の代表犬種であるMダックスやWコーギーなどは決して胴が長いわけではありません。 軟骨の形成不全によって、四肢が短いために一見胴が長く見えるだけです。 胴が長いために、これらの犬種は椎間板ヘルニアになりやすいと言うのは誤りです。
軟骨の形成不全は、四肢だけではなく背骨にも起きており、背骨の形成不全が原因で背骨を構成する椎骨および椎間板にも異常を来たし、特に衝撃を受けやすい椎間板に無理な負担がかかることで、椎間板ヘルニアが誘発されると考えられます。
軟骨異栄養症(軟骨低形成症および軟骨無形成症)
骨は、様々な成長ホルモンの働きかけによって、骨の先端にある成長軟骨の軟骨細胞が分裂を繰り返して増殖し、成熟した成長軟骨の一部は骨に変化します。 この過程を繰り返すことによって、植物の茎が伸びるように、骨は太く長く伸びていきます。
軟骨異栄養症とは、この成長軟骨がうまく骨に成長することができないために生じる、四肢短縮症や小人症を初めとする骨の成長が悪くなる先天的な疾患です。
特にハンセン1型椎間板ヘルニアは、遺伝的影響が大きいと言われており、CILPと呼ばれる蛋白質が変異し、軟骨の成長を妨げることが発症要因の1つとされています。
1-5 ハンセン1型椎間板ヘルニアの好発犬種
ハンセン1型ヘルニアになりやすい犬種は、以下の軟骨異栄養性犬種です。
Mダックスフンド、Wコーギー、Fブルドック、トイ・プードル、シーズー、パピヨン、チワワ、ヨークシャ・テリア、ビーグル、ペキニーズ、ラサアプソ、コッカー・スパニエル、パグ、バセット・ハンド、ポメラニアン、キャバリア、ジャック・ラッセル・テリアなどの小型犬。
軟骨異栄養性犬種の中でも、特にハンセン1型を発症する確率が高いのは、Mダックスで発症率40~50%とも言われています。 また、再発率も非常に高いため、発症および再発を防止するには、いかに背骨に負担を掛けない生活を送るかにかかっています。
ウェルシュ・コーギーは、変性性脊髄症(DM)の好発犬種でもあるので、中年期以降のWコーギーについては変性性脊髄症との見極めがとても重要になります。
1-5 ハンセン2型椎間板ヘルニアの好発犬種
ハンセン2型ヘルニアを発症しやすい犬種は、以下の通りで、大型犬種も含まれるのが特徴です。
ヨークシャー・テリア、マルチーズ、パピヨン、プードル、Mピンシャー、Mシュナウザー、柴犬、Gシェパード、ゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバー、シベリアン・ハスキー、フラットコーテッド・レトリバー。
