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4-2 椎間板ヘルニアの薬物治療薬物療法 内科治療

悪化の一途をたどる進行性の椎間板ヘルニアでない限り、1週間の服用で、急性の炎症はほとんど消えます。

よって、コハク酸メチルプレドニゾロン以外のステロイドは、抗炎症・鎮痛作用のみしかありませんので、投薬開始7日後からは、3日かけてステロイドの量を漸減し終了させます。

ステロイドには、抗炎症作用のほかに血行を抑制する(血の巡りを悪くする)作用もあるので、絶対安静期を過ぎたならば、速やかに温浴などの血行促進効果のある温熱療法などに切り替え、自然治癒の方向へ舵を切ります。 漫然とステロイドを使い続けると、血液中のマクロファージ(白血球の一種)の活動を抑制するため、治りを悪くします。

投薬治療中、ケージレストによる絶対安静が非常に重要で、改善が見られない場合、ヘルニアによる脊髄への圧迫が進行している場合が多く、手術適応が検討されます。

まとめると、ステロイドは初期段階で開始し、だらだらと投与せず、保存療法(ケージレスト)で改善を図るのが、「内科治療」の基本です。

  1. ステロイド(副腎皮質ホルモン) (内服・皮下注射・静脈注射)

    椎間板ヘルニアグレード1~2に対しては、最も一般的なステロイドであるメチルプレゾニゾロンを投与します。

    ステロイドには、突出した椎間板物質により圧迫を受けた脊髄および神経根の急性炎症や浮腫を緩和することで、痛みを軽減する効果があります。

    服用量は1日0.5~2mg/kg、服用期間は1~2週間を限度とします。 この条件下の服用であれば、全く問題はありませんが、服用量が1日2mg/kgを越えると、免疫力の低下をもたらし、長期の服用は多飲多食、肝機能への負担などの副作用をもたらします。

    何らかの事情があって、長期投与する必要がある場合は、効果が薄いが副作用のない非ステロイド系の薬物を使用することもあります。

  2. コハク酸メチルプレドニゾロン (ステロイドパルス療法)

    椎間板ヘルニアグレード3以上の場合、脊髄に激しい炎症が起こると、炎症細胞が放出する活性酸素(フリーラジカル)により、神経細胞の壊死が始まります。 これを阻止するために、手術をするかどうか関係なく、発症後早急にこの療法を開始することが重要となります。

    ステロイドパルス療法とは、短期間に大量(通常の数十倍)のステロイドを静脈より投与する治療法のことで、一般的に、コハク酸メチルプレドニゾロン(ソルメドロール)を発症後8時間以内に静脈注射にて初回投与し、数時間おきに何度か注射投与して、その後は3日間静脈点滴にて持続的に投与します(要入院)。

    数あるステロイドの中で、唯一コハク酸メチルプレドニゾロンだけが、フリーラジカルから神経細胞を保護する効果を持ちます。 ただし、発症後8時間以内に初回投与を行うことが重要で、8時間を過ぎると、効果が無くなるばかりか脊髄への損傷を悪化させる可能性があると言われています。

    コハク酸メチルプレドニゾロンは、椎間板突出後に生じる虚血、低酸素、神経細胞の壊死を防ぐ効果がありますが、これらの効果が時間の経過とともに減少する原因は、組織の損傷により血流が阻害される(ステロイド全般の特性)ためと考えられています。

    副作用として、消化器症状(嘔吐・下痢・血便など)が現れることがあるので、通常は胃酸分泌抑制剤などを併用して副作用の軽減・予防を行います。

  3. ポリエチレングリコール製剤 (PEG療法)

    椎間板ヘルニアグレード3以上および初期の脊髄軟化症、脊髄損傷の症例に対して、静脈点滴・注射により投与される最新の画期的な薬剤です。

    コハク酸メチルプレドニゾロン以上に、フリーラジカルから神経細胞を保護する効果を持ちます。

  4. エラスポール100(好中球エラスターゼ阻害薬) (皮下注射・静脈内点滴)

    椎間板ヘルニアグレード2~4の症例に対して、投与される最新の薬剤です。

    本来、人間の全身性炎症反応症候群の急性肺障害に利用されているエラスポール100が、犬の椎間板ヘルニアの治療薬として注目されてきており、脊髄炎症が起こった際に放出され、神経に損傷を与える体内物質(フリーラジカル)を抑制して、神経細胞を保護すると考えられています。

    症状が中等度以下であれば通院による皮下注射を5~10日間に渡って続けます(1回5千円程度)。 重症の場合は入院による持続的静脈内点滴で投与します。 継続的に投与することで徐々に効果が現れますが、全ての症例に対して効果があるわけではないので、5日経過しても一向に改善が見られない場合は、効果なしとして他の治療法に切り替えるべきでしょう。

    30~50万円の費用がかかる手術でも、医師の腕と椎間板ヘルニアの重症度によって、改善する見込みは50~70%程度とされているので、エラスポール100に限らず最新の薬物療法を受けてみる価値はあるでしょう。

椎間板ヘルニアにおけるステロイドの効果

① ステロイドは、犬の椎間板ヘルニアで突出ないし逸脱した椎間板物質によって起こる炎症を減少させる一方、
  糖代謝を阻害することで損傷したニューロンの生存に悪影響を与える。 (Sapolsky1994)

② コハク酸メチルプレドニゾロンを除き、他のステロイドには神経保護効果はない。 (Hearyら1997)

③ ステロイドを使用した神経外科疾患の15%に消化管出血の合併症が確認され、死亡率は2%である。
  デキサメタゾンは最も問題を起こしやすく脊髄疾患の内科治療には有用ではない。(Mooreら1982)

④ ステロイド使用による十二指腸、結腸穿孔が最も重篤な合併症である。 (Hintonら2002)

⑤ 一般的な消化管防御薬は、ステロイド誘発性副作用の防止に効果がない。 (Hanson1997)

⑥ 犬の脊髄疾患におけるステロイド療法は、短期間の抗炎症用量での使用でない限り、有効性がないばかり
  でなく合併症などのマイナス面が多い。 (Sturgess2003)

⑦ 椎間板ヘルニアの責任病変部では、脊髄への血液供給が進行性に減少する。 この際、フリーラジカルと呼
  ばれる高反応性化学物質が大量に放出される。 フリーラジカルは、細胞膜に障害を与える。 ステロイドのフ
  リーラジカルに対する神経保護効果はコハク酸メチルプレドニゾロンのみで証明されている。 用量は30mg/kg
  で効果があり、60mg/kgでは有害な副作用があり、15mg/kgでは効果がない。

服用量を変えることによって、皮膚疾患から自己免疫系疾患まで幅広く使われている汎用性の高いステロイドとほぼ同じ副腎皮質ホルモンは、動物体内の副腎から分泌されているホルモンです。

副腎は、副腎皮質ホルモンの血中濃度を常にコントロールしており、ステロイドが長期間投与されると、副腎は萎縮して副腎皮質ホルモンの分泌を抑制します。 この時に、突然ステロイドの投与を中止すると、萎縮した副腎はこれに対応できず、血中の副腎皮質ホルモンが欠乏状態に陥り、身体に様々な悪影響が現れます。

よって、ステロイドの処方には、専門的な知識と経験が必要となります。 それに値する獣医師の下、うまく使えば、その効果は絶大である場合もあります。